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【サイの季節】

バフマン・ゴバディ監督/2012イラク、トルコ
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実在するクルド系イラン人の詩人サデッグ・キャマンガールの実体験がモチーフ


イラン革命が起き、ある男の企みによって詩人サヘル(ベヘルーズ・ヴォスギー)は不当に逮捕され、30年の刑に処される。27年たち、ようやく釈放されるが、妻ミナ(モニカ・ベルッチ)は夫が死んだと聞かされており、イランを離れトルコに住んでいた。サヘルはトルコに出向き、ミナの行方を捜す。





イラン革命(イスラム革命とも言う)が起こったのが、1979年2月。

それまでは皇帝(シャー)によって「白色革命」という近代化、欧米化の政策が取られていた。
しかし、その恩恵を受け取るのは一部の市民に留まり、貧富の差が激しくなった。
これが上流階級と下層階級の対立を生み、それはリベラルと保守的なシーア派との対立でもあった。

民衆の不満は革命へ繋がり、革命後は、ホメイニー師を精神的指導者とする、政教一致の「イラン・イスラム共和国」が誕生した。


~あらすじ~
詩人として本を出版していたサヘル。
彼には大学で知り合った美しい妻ミナがいた。
ミナは大佐の娘で裕福な家庭に育っており、使用人を抱える生活をしており、その使用人の中に、運転手のアクバル(ユルマズ・エルドガン)もいた。
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アクバルはミナに恋焦がれており、1度はミナを乗せた車を人気の無い場所で止め、ミナを襲おうともした。
この件はミナが父親に報告し、父親の手によって、アクバルは袋叩きにされる。

そしてイラン革命が勃発。
アクバルはサヘルの詩について「神を冒涜している」と根拠のない告げ口をし、結果、サヘルは投獄され30年の刑になる。

ミナも同じく夫を支えた罪で10年の刑。
ミナの父親、大佐は国家のために働いていたため処刑されている。

刑務所の中で、どこに居るか分からないお互いを思い合う夫婦。
1度だけ、「手錠をし、頭巾を被ったままの逢瀬」を認められ、愛し合おうとするが、それをアクバルが見ており、無理矢理サヘルを連れ去り、アクバルがミナを犯す。

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ミナは妊娠し、男の子と女の子の双子を出産する。

刑期が終わり、ミナは刑務所から出て、夫がどこにいるか探すのだが、国が「夫はもう死んだ」と告げる。

投獄中のサヘルは、拷問される日々の中、ひたすら詩の世界に没頭するしかなかった。
ようやく月日がたち、釈放されるが、サヘルの魂は抜け殻となっており、拷問と虐待をされ続け弱った精神状態では、現実世界を生きるのも苦痛であった。
しかし唯一の希望、ミナの行方だけは探した。

ミナはトルコで移民として暮らしていた。
ミナはふたりの子供と、そしてアクバルが夫となっていた。
アクバルは新政権で指導者的存在になり、ミナとサヘルの結婚すら反故に出来たのだった。
しかしミナは、アクバルがすべての元凶だとは知らないでいる。

ミナをみつけたサヘル。
しかし、ミナの元に出向く事はなく、遠くから見つめるだけで、あとは自分の詩の世界に沈み込んでいた。

海辺で車を止め、何もせずにいるサヘルの元に、2人の女性が「車で送ってくれ」と頼む。
サヘルは差し出された料金を受け取らず車で送ってあげたので、女性たちから気に入られ、携帯に電話番号を勝手に登録されたりする。
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女性2人は売春婦だった。
2人はサヘルが気に入り、ピンチの時はサヘルに助けを求めたりした。
その日、女性に手を貸したサヘルの家に、2人が泊まりに来た。

女性の1人はサヘルに迫り、そのままサヘルと女性はベットを共にする。
翌朝、サヘルは女性の肩にタトゥーが入ってるのに気付く。
タトゥーは詩が刻まれており、その詩はサヘルの詩だった。

女性は、そのタトゥーについて、
「母親が亡くなった父の詩を彫っている。父は詩人だった」
と語るのだ。

ミナはアクバルに犯されても、父親はサヘルだと言い聞かせて育てていたのだ。
ミナの娘と関係してしまったサヘルは自分の背中にタトゥーを入れることにする。

何も知らずにやって来るミナ。
うつぶせになっているサヘルの背中にふれても、それがサヘルだと気付かないミナ。
「国境に生きる者だけが新たな祖国を創る」
と、サヘルの背中に文字だけが残る。

ミナはアクバルの30年前の企みを知り、アクバルと別れようとしている。

サヘルはアクバルを車に乗せ、海に沈む。
その後、車で走りまくり、サイにぶつかる。

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寒色系の色合い、
絶えず風が吹いてるような風景、
現在と過去、そしてサヘルの空想が入り乱れる映像は、注意して見ないと混乱します。
極力、セリフもなく、登場人物の本音は分からず、すべては観客のイメージにある、幾多ものシチュエーションの中です。

タイトルの『サイの季節』は、サヘルの詩から来ています。
大地は堅い塩の固まりだ
サイはその大地をなめる

これは現実の苦痛、そして絶望などを表してるそうです。

唐突に出て来る生き物も、たぶん監督の過去の作品、
『酔っぱらった馬の時間』
『亀も空を飛ぶ』
『ペルシャ猫を誰も知らない』
に関係あるんだと思います。しかし意味は分かりません。

主人公のモデルになった詩人のサデッグ・キャマンガールはイラン革命で25年間投獄されています。
主演のビーローズ・ヴォソーギもイランの大スターでしたが、革命でアメリカに逃れています。
そして監督自身も、国の許可なく、『ペルシャ猫を誰も知らない』をゲリラ的に撮影し、それが元で国を離れています。

それぞれがイラン革命の結果、国を捨てなければならなかった人物で、その彼らの声にならない叫びが、聞こえないけど響いてるような作品です。

気軽に見れる作品でもないし、救いようもないし、結末は結局どうなったか分からん、芸術的な作品です。



監督自身は現在、過激派組織ISの影響によって難民となった子供たちへの支援を行っており、彼らに映画の作り方を教えています。
その子供たちが作った短編を、どこかで上映したいと思っていた監督に、NHKが名乗りを上げ、
NHK-BS1スペシャル「僕ら難民キャンプが撮影所」
として放送されました。
監督は非常に感謝してる、お礼を言いたい、とインタビューで語ってました。



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